社説 出生前診断の新制度 自己決定を支える運用に

2021/07/04

毎日新聞 2021年4月4日

 妊婦の血液を使って行う新型出生前診断(NIPT)に新たな認証制度が導入されることになった。これまでとの大きな違いは国が関与することだ。

 NIPTは2013年に日本産科婦人科学会が指針を作り、認定制度を設けた。しかし、指針を無視して検査を提供する無認定施設が急増した。出生前診断は中絶につながることがあり、社会的・倫理的課題をはらむ。学会の自主規制に任せることには限界があり、国が関与する体制ができることは評価したい。

 運用にあたって重要なのは、カップルの自己決定を支える仕組みを構築することだ。正確な情報とカウンセリングが欠かせない。検査そのものの説明の他、障害がある子どもとの暮らしについてや、医療や福祉関係の支援体制を知らせることも不可欠だ。病気や障害のある人の存在を否定するような優生学的な考えを助長しないよう注意を払う必要がある。

 厚労省は消極的だった出生前診断の情報発信をするというが、国が検査を勧めていると受け取られてはならない。今後も生殖関連技術の開発や使用は進むだろう。国は法規制も視野に、包括的なルール作りを検討してほしい。