手話で語った 秘した半生  強制不妊訴訟地裁で結審 亡き原告の思い

2021/04/02

朝日新聞 2021年3月29日

 旧優生保護法(1948~96年)のもとで不妊手術を強いられたとして、聴覚障害のある兵庫県内の夫婦2組と脳性まひの女性が、国に損害賠償を求めた訴訟は25日に神戸地裁で結審した。判決は8月3日に言い渡される。訴訟の行く末を見ることなく昨年亡くなった原告の1人は昨年7月証言台で、手話で50年胸にしまい込んだ思いを語っていた。

 「切り捨て御免」というしぐさからきた「仕方がない」の手話を示し、「私たちは何度も何度も自分の体を切り捨て、『仕方がない、仕方がない』と言い聞かせてきた」。幼少時に聞こえなくなり、いじめや差別を何度も受けてきた。ろう学校では「みっともないから」と、手話を禁じられ、唇を読み取る「口話」を必死で勉強した。社会では努力した口話は全く通用しなかった。他人との会話は筆談で、職場で教えを請うと面倒くさがられた。仕事内容が同じでも給料は低かった。27歳で同じ障害の妻と結婚、母から「こどもを作るのはダメ」と条件をつけられた。手話ができない母に言い返しようがなかった。結婚前、病院に連れて行かれ、説明もないまま手術を受けさせられた。気付いたときには遅かった。「通訳がいれば断れたのに」。妻に打ち明けると、泣き続けた。50年間秘してきた。子連れの家族を見るたびに胸が締め付けられた。2018年、旧優生保護法について全国ろうあ連盟の実態調査で知った。自分たちを苦しめた手術は、法律に基づいたものだった。「国が法律をつくったことは間違いだとみんなにわかってもらうために訴訟を起こしました」苦しく、押さえつけられた50年を知ってほしかった。「間違いを国に謝ってほしい」

 法廷で語った4ヵ月後、判決を聞くこと亡く病気で亡くなった。