出生前診断のビジネス拡大 子の治療から逸脱の懸念

2021/04/02

毎日新聞 2021年1月15日

 新出生前診断は、妊婦の血液にわずかに含まれる胎児のDNA断片を高精度で調べるもので、国内では2013年に日本産科婦人科学会の臨床研究として始まった。全国100以上の認定施設が参加する。対象となるのは染色体異常の子をもつリスクが高まる35歳以上の妊婦。

 未認定のクリニックによる実施例も増えている。学会の情報発信アプリを使ったアンケートでは、妊婦の半数以上が認定施設以外で検査を受けたことやリスクが低い若い妊婦が多く受けていることが判明。宮城県立こども病院の室月淳産科部長は高齢出産への不安をあおる形で無認定の検査ビジネスが拡大しているとみる。手軽さと安さが売りで、十分なカウンセリングを行っている施設は少ない。懸念されるのは陽性の結果だけで中絶に進むケースだ。赤ちゃんが健康な可能性もあり、また妊娠中期の中絶は母胎への負担が大きく、深刻な心の傷を残す。室月さんが目指すのは赤ちゃんの病気を生まれる前に特定し、可能なら早い段階で治療することだ。「望まない結果が出たときにどう対処するか、検査を受ける前にパートナーと一緒に十分考えておく必要がある」と訴える。