着床前診断 拡大へ最終案 日産婦なお慎重論 さらに協議へ

2021/02/19

朝日新聞 2021年2月8日

 遺伝病を防ぐために受精卵の遺伝子を調べる「着床前診断」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は7日、対象とする病気を拡大する最終案を示した。成人するまでに命を落としかねない病気だけでなく、日常生活に大きな影響がある重い病気も加える。日本神経学会は含まれる疾患が多すぎると反対、など異論もあり、今後関係学会などと協議した上で見解をまとめる。

 着床前診断は体外受精させた受精卵の染色体や遺伝子を調べるもので、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断(NIPT)とは違う。

 「命の選別」につながりかねないとの指摘があり、医療機関からの申請を受け、日産婦が1例ずつ審査したうえで実施されている。定義は「重篤な病気」で、主に成人するまでに亡くなる可能性が高いケースなどに限られてきた。しかし2019年に遺伝性の目のがん「網膜芽細胞腫」の患者が申請。失明の恐れはあるが命に関わることはまれで、2020年から公開審査を始めるきっかけになった。

 東京大医科学研究所の神里彩子准教授(生命倫理政策)は「当事者はそれぞれに悩み、検査するかどうかを判断している。ただそうした当事者の思いと、社会に与える影響は別に考える必要がある。対象となる病気や障害がある人の存在を否定する考え方につながらないようにしなければいけない」と指摘する。

 日産婦は、審査を医療機関それぞれに倫理委員会を開いて行う形に変更する案も示した。

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