障害者が働きやすい社会は皆が働きやすい

2021/01/04

朝日新聞 2020年12月25日

 障害者の雇用をテーマにした座談会が11日、東京であり、課題や、障害がある人とない人が共に働く意義について、「障害者と共に働く」(岩波ジュニア新書)著者の藤井克徳さん(日本障害者協議会代表)、共用品推進機構専務理事の星川宏之さんらが語り合った。

 障害の捉え方は、社会の側に問題があるととらえる「社会モデル」へと変わってきた。2016年施行の「障害者差別解消法」では、個別に必要な支援を行う「合理的配慮」をしない場合は差別とされた。ただ、藤井さんによると、15~64歳の障害者のうち企業や障害福祉サービスの作業所などで働いている障害者は3割ほどという。作業所の平均工賃は月2万円に満たないというデータもある。自らも視覚障害があり、障害者の労働問題に長く関わってきた藤井さんは「障害者が抱える最も厳しい分野が労働ではないか」と指摘。その理由について、藤井さんは「労働は『社会的に価値のあるものを自分で生み出す』ことが求められる」点にあると分析する。星川さんは、障害の有無にかかわらず使いやすい商品を目指してきた。経験から「障害がある人と一緒のテーブルにつくことで知らなかったことに気付くことができる。その意見があったからこそ新たなものを生み出せた」と振り返る。藤井さんは「企業として生産性を求めるのは大事なこと」としつつ、過度になると「弱者探しの連鎖が始まる」「障害者を閉め出す社会はもろく弱い。障害者が働きやすい社会はみんなが働きやすい社会」と指摘。「コロナ禍は新しい社会作りの機会。復元ではなく創生という心構えで、そのときには障害がある人のことを少し考えてほしい」