吃音 業務で「心的負担」 看護師自死 労災認める判決

2020/11/14

朝日新聞 2020年10月15日

 吃音のある新人看護師の男性(当時34)が自殺したのは業務が原因だとして、遺族が起こした訴訟の判決が14日、札幌地裁であった。判決は、業務での心理的負荷により精神病を発病したとして労災を認め、国に遺族補償などの不支給の取り消しを命じた。

 男性は吃音があったため、初対面の患者や威圧的な患者に対して言葉が出なかったり体が揺れたりすることがあり、「気持ち悪い」などと言われることがあった。また、本採用に求められる水準に達していないとして、病院側から試用期間の延長を告げられていた。判決は、これらにより心理的負荷が加わったとして自殺と業務の関連を認めたが、原告側が主張した上司の指導や叱責が「業務指導の範囲を逸脱していた」との点については、「指導の範囲内」とした。

 吃音の人を支援する「日本吃音臨床研究会」の伊藤伸二代表は「吃音は、どんなに努力しても治らないことが多い。男性が誰にもSOSを出せずに命を絶ったことを思うと胸が痛い。周囲の人には、吃音の特性や当事者の努力を認める温かいまなざしを持ってほしい」と理解を求める。