吃音の自分嫌わないで 悩み語る子撮ったDVD完成【朝日新聞】

2011/11/10

 言葉が出にくかったり、同じ音を繰り返したりする「吃音」mpある子は、話しにくさだけではなく、授業での発表や友達との会話などたくさんの不安を抱えている。そんな子どもたちが語り合う様子を撮ったドキュメンタリーDVD「ただ、そばにいる」が完成した。

 制作したのはテレビドラマの演出などを手がける埼玉県の北川敬一さん。取材・編集に3年をかけた。

 北川さん自身にも吃音があり、小学生のことはどもってしまうことが多くて悩んだという。「あのころの自分がほっとできるような映像を作ろうと思った。吃音は悪いことでも隠すことでもない。吃音の子やその親にみてもらい、向き合うきっかけになれば」と話す。

吃音は2~5歳で症状が出ることが多く、幼児の5%に現れるとされる。うち7~8割は特別な治療をしなくても治るといわれる。症状や悩みを解決する方法はいくつか提案されているものの、決定的な治療法はない。

 DVDが吃音の子たちが集まったサマーキャンプの様子から始まる。小4の女子はカメラの前で膝を抱えて座り、「遊ぼうって言ったら『変な子とは遊ばない』と言われていやだった」と打ち明ける。小3の女子は体育館の体操用マットに寝そべりながら「自分がきらいになった。みんなは言えるのに自分だけ。生まれ変わりたい」

 成長するにつれ、進路の悩みも出てくる。弁当屋でアルバイトをしていたという高校生は「電話予約を受けなければならず自信がなくて逃げてしまいました」。「会社の面接は配慮してくれない」と話す子もいた。

 吃音と向き合い、周囲に自分の意見を伝えた子も。中学生の女子は、授業中に言葉に詰まった時、意見を言い終わらないうちに先生にまとめられてしまった体験を話した。「悔しかった。授業後、先生に『最後まで言わせて下さい』と言った。それ以来、先生はずっと待ってくれます」

 DVDは吃音のある大人や子ども28人から小学生へ送るメッセージで締めくくられる。「吃音のある自分をきらいになっちゃいけない」「隠さないで理解してもらうという姿勢が大切」「私も吃音だから、心配とか困ったことがあったら助けてあげるね」北川さんは「僕も吃音の自分に絶望したことがある。簡単じゃないけど、何とかなるよ、生きてみようよ、と伝えたい」と話す。

 DVDは全3巻。作家重松清さんが自身の吃音のことを語り、子どもたちにメッセージを送るインタビューも収められている。市販はしないが、吃音の子どもたちが通う「ことばの教室」や言語聴覚士のいる病院で実費で提供している。東日本大震災の被災地の「ことばの教室」には各県教委を通じて無償で送った。問い合わせは北川さん(090・1053・9388またはメールsky-wind707@kvj.biglobe.ne.jp) へ。