オンラインの方が学びやすい子も 一斉授業は苦手→学習意欲高まる例

2020/07/06

朝日新聞デジタル 2020年7月5日

 5月下旬の3日間、オンラインで行われた専門家の緊急対談「COVID-19と特別支援教育~これからのオンライン教育を考える~」では、オンラインだと落ち着いて学べる子がいるという声があちこちから出た。

 対談を主催した「atacLab」(東京都)は、支援技術やコミュニケーション技術によって障害のある人の生活を変えることを目的に、1996年から学校教師や福祉施設職員、親子などを対象にカンファレンスを続けてきた。今回は、コロナ禍による休校を受け、オンラインで何ができるかを議論した。

 不登校の子や教室では発言できなかった子が、学習意欲が高まり積極的に授業参加する例が各地で見られたという。香川大教育学部付属坂出小学校校長でもある坂井聡・同大教授(特別支援教育)は、自閉症スペクトラムの傾向がある子はオンラインの方が集中して学習できる特性があるという。端末という限られたところから、文字情報や音声で自分への指示が明確に伝わるので、周囲の雑音や動きに邪魔されず集中できるのだ。聴覚過敏の子、耳で聞くより目で見る方が記憶しやすい子にも効果が上がりやすいという。オンライン学習も中学校から授業として認めていけばいいのではないかと議論した。

 松江市立意東小学校の特別支援学級担任・井上賞子教諭は「学びの場所を学校に限定して考えてしまっていたのかなと思った」と話した。書くことが苦手な5年生男児は、休校前から日常的にiPadを使っていたこともあり、いつも以上に学習が進んだという。さらに、家庭ならではの学びも加えられないかと工夫した結果「オンラインは、家庭での日常生活とつなげた学びができる。効果をより生かす学びもあると気付いた」という。

 国立特別支援教育総合研究所の青木高光主任研究員は、在宅が長くなり、ストレスがたまる子どもたちについて語った。ゲーム漬け、動画漬けになり不規則な生活へと流れがちで、その状況から抜け出すのはなかなか難しい。都内の特別支援学校の教師たちが、親子で簡単に取り組める学習ゲーム動画などを配信していた例を報告し、「オンラインで定期的につながって、家庭とコミュニケーションすることが、障害のある子にも不登校の子にも予想以上の効果がある」と話した。

 東大先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授は「日頃から、学校と家庭をオンラインで結んでコミュニケーションや学習の練習をした方がいい。そしてオンラインだろうが対面だろうが、一人ひとりの学びの本質の部分で評価する時代に変えることが、学校で苦しんでいる多くの子どもたちを救うことになり」と話した。