強制不妊 また除斥期間の壁

2020/07/06

朝日新聞 2020年7月1日

旧優生保護法をめぐる訴訟の30日の東京地裁判決は、不妊手術の違法性を認めつつも、原告側の損害賠償請求を退けた。損害があっても20年で賠償請求権が消える「除斥期間」が大きな壁となった。

除斥期間の趣旨は、法律関係を速やかに確定させることだ。ただ今回のような、提訴までに長い時間を要した裁判では、被害の救済を阻む最大の要因となってきた。

今回の訴訟では、国は「手術時が起算点」と主張。一方原告側は、子どもを産めない状態が続いており「損害は終わっていない」として、そもそも起算していないと主張。判決では、人権意識が高まっていた社会情勢を考慮した上で、障害者差別を正面から認める形で法改正された1996年時点では「提訴が困難とは認められない」と判断した。起算点についての判断が示されたのは初めて。

小山剛・慶応大教授(憲法学)は、「旧優生保護号を憲法違反とした仙台地裁の判決から、かなり後退した印象だ。一時金支給法が成立し、国が謝罪した昨年を除斥期間の起点とするのが相当だ」と話す。

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