障害のある子も オンライン授業

2020/05/31

朝日新聞 2020年5月26日

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための休校で広まったオンライン授業。耳や目の障害、発達障害などそれぞれの特徴に配慮した授業作りを紹介。

 大阪府立堺聴覚支援学校の教諭・稲葉通太さん(60)は聴覚障害のある小中学生向けのオンライン教材が少ないと感じ、4月から主要教科の動画30本を作った。動画では、教諭が手話と声で説明する。稲葉さんの動画で学習する府立生野聴覚支援学校中学部2年生の中井美佑さん(13)は「学校の授業と同じように、手話を見ながら勉強できると安心する」と話す。稲葉さんは「休校中に学びを止めないためのオンライン授業だが、聞こえない子を置き去りにしていないか。設備や時間は限られていても、できることから進めたい」と言う。

 インターネットで、手話や文字を使って授業をする塾もある。聴覚障害のある中高生が大学進学を目指して学ぶ「ろう・難聴中高生の学習塾」(東京)だ。普段は対面式の授業をしてきたが、3月からメールやツイッター、ビデオ通話など生徒が希望する形でのオンラインに。対面式にくらべ時間がかかり、やりとりできる情報量も限られる。参加する生徒は普段の半数にとどまる。塾を運営するNPO法人ろう・難聴中高生の学習支援の会の斉藤みか理事長(35)は、遠方の生徒から申し込みがあり、全国の聴覚障害児に提供できる可能性を感じ「遠くからでもつなぐことができるオンラインの便利さも生かしたい」と話す。

 障害のある大学生も支援を必要としている。この春慶応大学に入学した、視覚障害のある金沢悠人さん(19)は、仙台市の実家で10科目をオンラインで受講している。あらかじめ資料をもらえないか、文字を拡大しやすいPDFファイルを使ってほしいなどの要望を各教授らにメールで伝え、対応してもらった。金沢さんは「初めてなので何に困るか想像しにくかった。やりながら相談を重ねていきたい」と言う。慶応大の中野泰志教授(特別支援教育)は「一人ひとりの困りごとを誠実に聞くことが必要。相談しやすい環境づくりも大切」と話す。

 広島大学の氏間和仁准教授(特別支援教育)の研究室では、発達障害がある子どものオンライン学習を支援している。見通しを持てない状態に不安を感じる子どもが多いため、目で見て理解できるような説明に努めているという。公立小中学校などでのオンライン授業の進め方についても「認知の仕方は様々。平均的な児童・生徒を想定したやり方にあわない子もいるということを忘れないこと」とアドバイスする。