[私の視点]『自立支援法廃止 多様な施設を認める制度に』 杉本啓子(言語聴覚士、NPO法人副代表) 【朝日新聞】

2009/10/28

鳩山由紀夫首相が国会の所信表明演説で障害者自立支援法の早期廃止に向けての検討を表明した。自立支援法の問題として、障害者がサービスを利用する際の「応益負担」が取り上げられているが、問題はそれだけではない。施設の多様な業態が認められなかったため、障害者のニーズにきめ細かく応えてきた小さな事業所が補助金を受けられなくなり、いくつも閉所に追い込まれた。
 私たちのNPO法人コミュニケーションーアシストーネットワークは言語聴覚障害者の社会参加支援を目的としており、活動の一環として失語症に特化した身体障害者デイサービス「すももクラブ」を05年に設立した。
 脳卒中の後遺症などで言葉が思うように出なかったり、人の言葉が十分に理解できなかったりする失語症では、人によって程度の差はあるが、職場復帰や社会参加が困難になる人が多い。介護保険のデイサービスなどでも認知症や聴覚障害との違いを正しく理解してもらえず、疎外感を味わう人も少なくない。失語症の人たちが仲間と共に会話を楽しみ、趣味や創作活動を行える施設は極めて少ない。
06年の自立支援法の施行で、事業体系がそれまでの支援費制度から大きく組み替えられた。私たちの小さい施設は最低利用人数や障害区分などの基準が厳しい国の「自立支援給付事業」にはなれず、自治体の事業である「地域活動支援センター」になった。その結果、収入は半減し、経営的に苦しい状態が続いている。
 この自治体事業に対しても、補助金拠出の条件に、最低利用人数などの施設基準が設けられている。失語症や盲聾などの障害に特化した施設は、利用人数はさほど多くないがニーズは高い。重度障害者や重複障害者のニーズにきめ細かく応えられるのは小規模の事業所だからこそ、といえる。
 基準を満たせなかった小さな事業所がとうとう閉鎖に追い込まれたときくと、ひとごとではないと思う。
 こうした不合理を厚生労働省にただすと、「国としては厳格な基準を適用する意図はなく、自治体の裁量に任せている」という。一方自治体は「国が補助金を出す条件として示している施設基準は順守すべきだと考えている」という。国が制度設計した際の意図が自治体に十分伝わっていないのかもしれないが、元々は自立支援法が多様な事業形態を認めていないことに、私たちのような小規模の施設が苦戦する原因がある。
 新制度は、こうした多様な事業形態を包括するものであってほしい。また地方自治体は国の「基準」にいたずらに縛られることなく、弾力的に運用する力をつけてほしい。