新型コロナ:日常が一変 障害者の暮らし

2020/04/20

朝日新聞 2020年4月20日

 新型コロナウイルスの感染拡大は、予期しない変化に不安を感じやすい障害のある人や、支える支援者にも大きな影響を及ぼしている。

 埼玉県川口市にある「みぬま福祉会」は3月から、通所施設通う約150人のうち約60人が交代で自宅待機し、入所施設で暮らす約130人のうち約40人も交代で一時帰宅をしている。障害のために手助けなしで、自分で予防するのは容易ではない。糖尿病などの基礎疾患があり、重症化しやすい人もいる。密集のリスクを避ける帰宅策だが、必要な人には職員が自宅に行き支援するが、自宅で介護する家族も限界になってきている。高橋理事長は「いつ集団感染が起きても不思議ではない不安と緊張の中にいる。支援崩壊につながりかねない」と話す。

 社会活動の停滞は、障害者が働く現場も直撃している。作業所などでは、感染のリスクと並んで仕事の減少が心配だ。さいたま市の「きりしき共同作業所」は、精神障害のある人が主に利用している。施設長は「工賃が払えなくなれば生活と命に直結しかねない。精神面や体調への影響も心配」と話す。利用者の女性(55)は「作業所に行くことで生活リズムが整い体調も管理できる。ちゃんと働ける自信にもなる。休業してほしくない」と言う。

 利用者と親たちの不安も募っている。自閉症と知的障害がある男性(19)は鉄道ファン。「好きなところに出かけられない」ことが不安と言う。母親は「息子は予定通りにならないことや見通しが立たないことに不安になりがち。最近、ひとり言の声が大きくなり、ストレスがたまっていると感じる」。男性が通う通所施設は、所在地市内で感染者が出て休所したが、受け皿が必要と考え、2週間後に再開。不安をうまく伝えられずパニックになる人もあったり、「子どもがいらいらしてつらい」といった家族の声もあったからだ。作業所を運営するNPO法人理事長は「支援員の精神的ケアも今後の課題」と話す。

 障害のある人たちをどう支えればよいか、専門家に聞いた。王子クリニック(東京都)の石崎朝世医師は「できるだけ普段と同じ生活リズムを保つことが大事」、その上で「過度に外出を自粛してストレスをためるより、人が少ない場所や時間を選んでの散歩など気分転換を取り入れてほしい。衛生管理を手助けする家族や支援者の健康も大切」と話す。川崎医療福祉大の諏訪利明准教授(医療福祉)は、自閉症の人の家族、支援者に向けた「不確実なときに自閉症の人を支援するということ」(米ノースカロライナ大専門家チーム作成)を大学のウエブサイトで公開。「七つの戦略」が書かれている。