「見えない障害」知って 高次脳機能障害・川口大介さん

2020/03/01

朝日新聞 2月24日

 大手前大学総合文化学部1年の川口大介さん(19)は、幼い頃から祖母が作る納豆巻きが大好きで、料理人を夢見ていた。中学生の頃交通事故にあい命は取りとめたが、左半身のまひ、高次脳機能障害などが残って、身体、精神、療育の障害者手帳を持つことになった。つらいことは何度もあったが「おばあちゃんに自分の作った料理を食べさせてあげたい」と、料理人への夢は消えなかった。大学では、英語やフランス語などを学ぶ。卒業後に専門学校へ通い、料理についても本格的に勉強するつもりだ。「障害者も健常者も外国人もみんな一緒になって、ほっと一息できるような店を開きたい」

 宝塚市内で就労継続支援事業所を運営する「高次脳機能障害サポートネット」の八尾敏子副理事(51)によると、「高次脳機能障害」は見た目には障害があるとは分からない場合が少なくなく、どんな障害があるのか理解されにくいという。川口さんの母・智代美さん(55)によると、大介さんには▽二つのことが同時にできない▽すぐに疲れる▽覚えられない▽集中力が途切れる…などの症状がある。他人の冗談をそのまま受け取ったり、話の最中に無意識にあくびが出たりして誤解されることもあった。八尾副理事は「人によって症状が違う。脳が疲れやすくあくびが出ることもあるが、本人は気づきにくい」と指摘する。外見からはわかりにくい障害がある人らが周囲に配慮を必要としていることを知らせる「ヘルプマーク」、大介さんがこれをつけていても障害を理解されないことが多いという。智代美さんは「こうした障害があることをもっと知ってほしい。その上でその人に合った支援をしてもらえれば」と話す。