はぐくむ 「人と違う」そこにある輝き 料理家・高山なおみさん 絵本を作るわけ 吃音に悩んだ頃 思えばつややかな世界

2020/03/01

朝日新聞 2020年2月22日

 最初の絵本のタイトルは「どもるどだっく」(ブロンズ新社)。主人公は4歳のなみちゃん、幼い頃の高山さんだ。きっかけは、吃音に悩んでいた幼いときのことを話していた旧知の編集者から「言葉が出なかった頃の絵本を作りませんか」と提案されたこと。まだ自分が吃音だと気づく前の幸せは子ども時代のことだったらできるかもしれない、と思った。

 富士山をのぞむ静岡県の小さな街に生まれ、両親、祖母、兄弟4人の家族だった。3歳になっても言葉がうまく出なかったそうだ。小学校に上がると、どもるから恥ずかしくてだんだんしゃべらなくなった。国語は好きだったけど、朗読が何より苦手。その体験と向き合うことは大きな宿題だったが、できなくて迷った。絵の中野真典さんと進めるうちに、中野さんが描いた絵を見て「わたしがいた世界はこんなに明るいところだったんだ」とびっくりした。その頃のいろんな感覚を思い出し、なんてつややかでまぶしい世界、と思った。

 今年1月、「おにぎりを作る」(ブロンズ新社)という絵本を出版した。料理のことで何かを教えるというのはおこがましいと思ったが、編集者からおにぎりの素敵な思い出を聞いたり、背中を押してくれる人があって、できた。おにぎりって、誰かのために思いを込めて握った原初のような料理。

 次はお味噌汁をテーマに、わくわくしながら構想を練っている。