ともに・2020バリアーゼロ社会へ  障害、社会が生み出したもの  当事者と学ぶDET(障害平等研修)  五輪ボランティア必修

2020/01/06

毎日新聞 2019年12月22日

 東京五輪・パラリンピックのボランティア研修が11都道府県を会場に10月にスタート、約8万人が3時間の研修を受ける。大会組織委によると、今回初めて取り入れられ、全員が受けるプログラムがある。障害平等研修(DET)で、障害者が進行役となり、「障害とは何か」「解消のために何ができるか」を考える。

 11月29日に埼玉県戸田市で開かれた研修を取材した。この日の進行役は車いす利用者や視覚障害者ら6人。冒頭で参加者に「障害」の定義を書き出すよう求めると、「生きづらさを感じる人の総称」「不自由」など、障害者に着目したことばが目立った。次に、車いすの女性が買い物をしているラストを見て、障害がどこにあるか考える。今度はほとんどが女性の「周りの環境」だった。さらに、障害者と健常者の立場が逆転した「架空の世界」のビデオが上映された。

 その後障害とは何か、改めてペンを走らせると、「健常者が作り出した」など、多くの答えが冒頭のものとがらりと変わった。進行役の、車いすを使う上野さんは「障害は社会が生み出している」という考え方が伝わったのでは」と手応えを感じた様子だった。

 進行役の、先天性の視覚障害がある畝本さんは、障害者への理解がほんとうに進むのか不安も感じている。10月にJR新宿駅で、ブラインドサッカー元日本代表の石井宏幸さん(当時47歳)がホームから転落し亡くなった事故時、周囲には多くの通勤客がいたとされるが、誰かが「大丈夫ですか」と声をかけていれば防げたのではないか、との思いが脳裏から離れない。「障害者は周囲の健常者から見えないふりをされがちだ。DETは互いがしっかり向き合うきっかけになると期待する。事故後、DETでは必ずこう呼びかける。「周囲に困っていそうな人がいたら、声をかけるか、せめて見守ってほしい」