ひと  芸術祭大賞作品を作った聴覚障害のあるディレクター・長嶋 愛さん

2019/11/21

朝日新聞 2019年11月15日

 日本で唯一、全教科を手話で教えるろう学校「明晴学園」(東京)を舞台に、手話という「言語」の豊かさを描いたドキュメンタリー「静かで、にぎやかな世界」を制作。国内外での受賞が続いている。

 神奈川県生まれ。2歳で難聴と診断され、NHKに入り5年後難聴が進み取材が難しくなった。会話を文字に起こす通訳を要望したが認められず、同僚に筆談を頼むのも遠慮し、退職も考えた。しかし、ある日訪れたろう学校で「輝いている先輩」として紹介され、「あの子たちにうそをつきたくない」と粘り強く声を上げ、通訳が認められた。

 その頃出会ったのが明晴学園だ。「聞こえない自分」を否定せず、自信満々な子ばかり。ありのままの豊かさを「映像なら自然に伝えられる」と確信した。番組内で生徒や卒業生に「聴者になれる魔法の薬があったら飲みますか」と問いかけた。これは自分への問いかけでもあった。「やっぱり飲みません。聞こえないわたしでいいんです」