気づきにくい 女性の発達障害

2019/09/13

朝日新聞 2019年9月11日

 発達障害の特性と向き合うには、早めの気づきと専門家とのつながりを持つことが大切だ。しかし、男性にくらべ女性は発達の凸凹が目立たないために、対応が後手に回りがちという。

 大阪市内で5日、発達障害に苦しむ女性の当事者会が開かれ、10人が集まった。一人が「自分が思っていなくても周りが言ったことに合わせないとうまくいかない」と言うと、同調する声が続いた。

 4人の子どもがいる女性(35)は「ママ友とのコミュニケーションがとりづらい」と打ち明けた。子どもの頃から人とずれるような違和感があったが、周囲に大きな迷惑をかけることは少なく、困りごとは一人で抱え込んだ。大人になり、子どもの保護者会、料理や掃除など、うまくいかないことが出てきた。今年、自閉スペクトラム症(ASD)と診断され、今も心身の不調を抱えたままだ。

 20代の次女に発達障害がある女性(54)。次女は思春期に入ると不登校になり、部活動になじめない、いじめられるなど対人関係の困りごとが増えた。「見通しが持てず、親子でぶつかり合ってばかりで苦しかった」という。高校生の頃診断が下り、この夏障害者雇用枠で就職が決まった。

 女性の発達障害に詳しい「どんぐりクリニック」の宮尾益知医師は、「女性の発達障害は発見が遅れがち。男性症例が多く、研究も遅れている」と指摘する。女子は言葉の発達に遅れがないことが多く、ある程度コミュニケーションがとれるので、周囲が気づきにくいことがある。問題が顕在化するのは思春期以降が多い。しぐさや表情が読みとれず、あいまいな話が理解できずに仲間はずれにされる。メンタル面の不調が体調不良につながり、病院を受診したときには心身のバランスを崩していることが多い。異性トラブルのリスクも高まり、性的な被害に遭わないよう注意が必要だ。親になって子どもに適切な対応ができないこともある。宮尾医師は「特性を理解して、よい方向に生かすこと」とアドバイスする。