教育の窓 障害ある子も学童で一緒に

2019/07/14

毎日新聞 2019年6月3日

 学童保育(放課後児童クラブ)で障害児の受け入れが広がっている。インクルーシブ(包括的)な学童を実践している現場を訪ねた。

 神奈川県横須賀市久里浜の商店街に、2018年4月新しい学童保育所が誕生した。入り口のガラスには「障害のある子もない子も共に生きるインクルーシブ学童」と書かれている。この学童保育所「sukasuka-kids」には小学1~6年生まで34人が登録している。このうち約半数の子が何らかの障害を持っている。施設の運営団体代表の五本木愛さん(45)は、「小さい頃から様々な子が共に育ち、人と違うことが当たり前と思えることが、障害理解につながる」と語る。昨夏見学した淑徳大・山下幸子教授(社会福祉学)は「スタッフにも子どもたちにも、その場に多様な子どもがいることが自然という認識が持たれていた」と話す。

 障害のある子どもが放課後や休日を過ごす療育の場としては2012年の改正児童福祉法で「放課後等デイサービス」が創設された。静岡産業大・宮地由紀子講師は、障害児も学童保育や児童館など一般的な子育て施策を利用できると同時に、専門的な支援が必要な場面では放課後デイなどの専門施設を選択できることが重要と指摘する。その上で「障害のある子どもを、地域と切り離さない流れが必要だ」と強調している。

 厚生労働省によると、2018年の学童保育の登録児数は123万2366人で、年々増加傾向にある。中でも大きく伸びているのが障害のある児童で、5年前の1.5倍。障害児を受け入れているクラブは全体の55.9%と過半数を占める。背景には、障害児の受け入れについて、厚労省が2015年、運営指針に「可能な限り受け入れに努める」ことを明記し、職員加配、医療的ケア児の入所時の看護師配置、施設のバリアフリー化、のための補助金制度で後押ししていることがある。ただ、受け入れ人数がふくらんだ施設では、きめ細かな配慮や指導ができなくなる恐れもある。北九州市立大・楠凡之教授(臨床教育学)は「専門的職員の確保や、基盤となる保育環境の整備が、障害児の受け入れを議論していくための前提条件だろう」と訴える。