社説余滴:新型出生前診断の行く末(行方 史郎)

2019/04/21

朝日新聞 2019年4月14日

 新型出生前診断をテーマに昨年末、日本産婦人科医会が開いた記者懇談会での資料にある「妊娠中断率」。三つの染色体(21番、18番、13番)の異常の陽性が確定した後、自らの意思で中絶を選んだ人の割合は、21番の中絶率が高く、そこからはやりきれない現実が見えてくる。

 全体の2%とはいえ、陽性と出れば重い判断を迫るこの検査について、日本産科婦人科学会が指針にある施設基準を緩め、研修を受けるなどすれば診療所でも受けられるようにする。認可外施設への歯止めにならないばかりか、検査が当たり前になっていく恐れも否定できない。

 検査への向き合い方は最終的に当事者の判断に委ねられるべきだ。ただ、一人ひとりが自分に最善な選択をしたとしても、みなが望んだ社会になるとは限らない。そのことは心にとめておきたい。