知的障害者のみとり~グループホームの模索~上・中・下

2019/03/03

朝日新聞 2019年2月27日、28日、3月1日

 知的障害のある人が暮らすグループホームが「みとり」を模索する姿や課題を紹介している。

 (上)では、「最後まで仲間が見守る」のタイトルで、横浜市のグループホーム「森の泉1」での、あるみとりが紹介されている。知的障害者のグループホームは1989年、地域での自立生活推進のため厚生労働省が制度化した。今は障害者総合支援法の福祉サービスで、障害種別を限っていない。入居者は原則10人以下で、スタッフは主に朝夕の食事作りや介護を担い、日中は通所施設などに通う。しかし、高齢化が進み、入居者12万人のうち約13%が65歳以上(厚生労働省、2018年10月時点)で、今後も増える見通し。「森の泉」でも、未経験の高齢者介護に、学びと創意工夫で取り組んだ。

 高齢期支援に特化したグループホーム、北海道伊達市の「麦わらぼうし」(定員7人)が紹介されている。「大往生の支援に時間をかけ丁寧に」「感謝と納得の思いに包まれ、人生を閉じていく見送りを」という法人の理念を形にしたという。

 

 (中)では、終末期ケアに取り組むグループホームが抱える課題、特に深刻な担い手の不足を取り上げている。昨年3月、「厚木精華園」(神奈川県)はみとりについて2年間にわたって検討した結果をまとめた。「在宅専門医の確保が必要条件だが、現実的には困難。職員のスキルアップと覚悟が課題で、負担や心のケアへの対策も必要」(抜粋)

 高齢の知的障害者向けに昨年4月開設した「あいすくり―むの家」(兵庫県明石市、定員5人)は、看護師を24時間配置する全国でも珍しいホームだ。確保のために「近隣の医療機関に近い賃金」を目指した。ホームの計画段階から市に援助を求め、市も重要課題と位置づけて独自の助成制度を作った。ただ。賃金を高くしても常勤は見つからず、十数人の非常勤のシフト勤務でつなぐ。運営法人理事長で医師の日下孝明さん(76)は「高齢になった親が介護するのは難しい上、高齢者施設から受け入れを拒まれたことも。ホームは、みとりを望む人の最後のとりで。国や自治体は後押ししてほしい」と話す。

 

 (下)では、立教大学教授・平野方紹さん(障害福祉論)がホームでのみとりの意義と課題、対策について語っている。国が「施設から地域へ」という障害福祉の方針を掲げる以上、みとりを望む人を公的に支援すべきだと述べ、ホームを支援する医療センターの設置なども一案という。また、支える側の意識改革も必要で、「死」をタブー視せず本人が人生の閉じ方を考えるために情報や選択肢を提供すべきだという。障害者が望む最後を迎えられることは、誰もが自分らしい最後を迎えられる社会につながるはず、と話す。