学習会「失語症要約筆記〜ことばのバリアフリーをめざして〜」

2008/11/30

発言者:田中加代子さん (三田失語症友の会)
     :岡田明美さん (三田サマリー 要約筆記者)
     :堀本一治さん (よっかいち失語症友の会)
     :横山慶さん (三重パソコン要約筆記サークル・ことのは)

「要約筆記」と言えば、聴覚障害者への情報保障の一方法として近年重要な位置づけをされるようになった。具体的な方法として4つあるそうだ。?オーバーヘッドプロジェクター?パソコンを使いスクリーンに映し出す方法、この方法は大勢の人が同時に見ることができる。?ホワイトボードなどを使う方法で、電源や机のない屋外で有効だという。多数向けにも個人向けにもできる。?ノートテイク、支援の必要な人のそばで紙に書いていく方法で、その人にあわせて文字・絵などを使うことができる。?は講演会などで実際に体験したことがある方も多いと思う。その時、“要約筆記があるとわかりやすいな”という印象を持ったのはわたし一人ではないはずだ。わたしたち健聴者も、耳で聞くだけよりも目からの情報が加わった方が、つまり複数の回路からの情報がある方が理解しやすい。
 さて、脳梗塞などの後遺症として起こる「失語症」は言語の理解面も障害する。話しことばの理解にも、書きことばの理解にも、程度は様々だが難しさが起こる。失語症のある方とコミュニケーションをとる時に、私たちはその方が少しでも理解しやすいようにと様々な工夫を試みている。例えば、実物を示したり身ぶりを併用したり、あるいは漢字などの文字を書き示したりカレンダーを使ったり…。こういった工夫と要約筆記は共通点があるのではないか?要約筆記の技術の中に失語症のある人の理解を助けるヒントがあるのではないか?と考えて実践を始めている方達がある。その中で今回は、「四日市失語症友の会」堀本さんと「四日市要約筆記の会」横山さん、そして「三田トークゆうゆう」田中さん、「三田要約筆記の会」岡田さん・井上さんからお話を伺った。
「四日市失語症友の会」の堀本さんは、友の会や障害者連合会などの会議で「話がわからない、議事録が作れない」など、実際に困った体験から要約筆記者のボランティアの助けを借りたところ、会の運営がスムーズになったそうだ。この支援を継続的に安定して受けられるようにしようと行政に働きかけ、障害者自立支援法の「コミュニケーション支援サービス」制度として利用することを実現された。実現までには並々ならぬご苦労があったようだが、堀本さんは2点を特に強調された。ひとつは、他の障害者団体と連携すること、もうひとつは熱意である。
 「三田トークゆうゆう」の田中さんは、失語症がある夫のコミュニケーション支援をしてきた体験と、要約筆記者としてのボランティア活動体験とを生かし、仲間の要約筆記者と共に、失語症者への要約筆記を模索し実現してこられた。
 それぞれのお話から、失語症のある人にとっても「要約筆記」は理解を助ける方法として有効であるようだということ、ただし失語症という障害の特性や症状の個別性を考慮することが必須であることがわかった。要約筆記の3原則は、「速く、正しく、読みやすく」だそうだが、例えば「正しく」を徹底したのでは失語症のある人にはかえってわかりにくかったりする。実際に堀本さんと田中さんは、「話しが抜け落ちては情報保障にならないが、わかりやすく簡潔に」などとお願いをしたそうだ。またそれに応えて要約筆記者の皆さんも「話しの要点をまとめる、省略しすぎない、分かち書きにする」などの工夫をすすめつつある。当事者と要約筆記者に加えて、失語症を適切に理解している人の仲立ちがあるとより有効なものにしていけるのではないかということも今回共通認識できた。
 様々な障害に対しそれぞれに保障の方法がある。聴力障害には補聴器や手話が、歩行障害には補装具や車いすが必要なように、ことばの理解が難しければそれを保障することは当然のことだ。ガイドヘルプサービスは視覚障害の人への支援として始まり、身体障害や知的障害のある人へと広がった。失語症の人に有効なコミュニケーション支援の方法である「失語症要約筆記」をぜひとも広げていく努力をしなければならない。すでに四日市に、失語症の人の言語理解を助けるために障害者自立支援法の「コミュニケーション支援サービス」制度を活用できる前例があることは、私たちにとって大きな力になる。