家族って「産む」編2  おなかの子がダウン症 揺れる選択

2018/09/10

朝日新聞 2018年8月1日

 ある夫婦の場合。

 初めての妊娠11週でダウン症の疑いを告げられ、羊水検査を受けた。19週頃、ダウン症だと知らされ、夫婦で話し合い、やむを得ずあきらめる決断をした。21週で中絶したのは男の子だった。

 2回目の妊娠がわかり、11週で再びダウン症の可能性を指摘された。1人目の経験から、「産む」という2人の決意は揺るがなかったが、医師の勧めで「新型出生前診断」を受けた。結果は陽性で、さらに羊水検査でダウン症だとわかった。夫は「子どもの将来への不安はなるべく考えないようにした。妻の心と体にこれ以上の負担をかけるわけにいかない」、妻は「2度続いたことでおなかの子に運命的なものを感じた」と、長女を出産した。

 夫が帰宅すると長女は笑顔で迎えてくれる。「本当に癒やされる」と夫。妻は「普段なかなか笑わない夫が、娘が笑うと笑顔になる」。ダウン症や他の障害がある子の家族とのつながりが生まれた。

 女性は今、「娘を大切に育てていこうと決断できたのは、息子のおかげ」と振り返る。出生前診断については出産態勢や「気持ちの準備ができる一方、産む、産まないの選択を迫られることもある。不安を解決するための検査ではないことを知ってほしい」と語る。