聴覚障害者にも「強制不妊」 

2018/06/18

朝日新聞 2018年6月10日

 優生保護法(1948~96年)下の強制不妊手術は「遺伝性の難聴又はろう」の人も対象にしていた。全日本ろうあ連盟が全国の聴覚障害者を調査したところ、70人が不妊手術や中絶を強いられたという回答が寄せられた。障害者団体がこうした調査を実施し、公表したのは初めて。

 5月末までに回答のあった、11道府県分の中間報告で、女性52人、男性18人。法に基づく手術かどうかや本人の同意の有無が不明な例も、拒否できない状況で意に反して施された「事実上の強制手術」として数えている。連盟は会員約1万9千人。3月以降、47都道府県の加盟団体を通じ本人や家族から手話で聞き取り、8月まで続ける。

 連盟が9日に大阪市内で行った記者会見に、調査に応じた6人が出席。聴覚障害ゆえに十分な説明も受けられず、手術を強いられた無念さを、手話で語った。神戸市の高木賢夫さん(79)は、妻にも聴覚障害があり、子どもを産まないことが結婚の条件だと親に言われた。手術について手話で説明してくれる人はおらず、「筆談では限界がある。手話通訳がいれば拒否できた」という。高木さんは優生保護法のことを知らず、今年、強制不妊手術について報じた新聞記事を読み、法の意味を知った。「国に謝ってほしい」と、提訴する意向だ。大阪府の女性(78)は同居していた親戚に「子どももろうになる」と言われ、何度も中絶させられた。その家を逃げ出し、2人の子を産んだ。「同じことを繰り返さないために経験を話したい」と述べた。