ADHD 親トレで好循環

2018/06/15

朝日新聞 2018年5月30日

 発達障害の一つ、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもには、家庭や学校で困る行動を減らして成長を支える「心理社会的治療」の重要性が強調されるようになった。そのうち親を対象にした行動療法「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)」が広まりつつある。

 ADHDは脳の一部の働きが生まれつき弱く、不注意だったり、じっとしていられなかったりする障害で、子どもの約5%に見られるとされる。自閉症スペクトラム症と合併していることも多い。治療に用いられる薬もあるが、2016年に改訂されたADHDの診断・治療ガイドラインは「心理社会的治療から開始すべき」とした。子どもが集中できるような環境調整、ペアトレや行動療法などだ。ガイドライン作成責任者の斉藤万比古・母子愛育会愛育相談所長は「治療の目的は症状を無くすことではない。子どもが症状を抱えながら日常生活に適応し、成長することだ」と話す。

 厚労省は14年度から発達障害者支援策のひとつとしてペアトレの普及を進めている。日本ペアレント・トレーニング研究会の岩坂英巳会長は「陥りがちな悪循環を、親が対応を変えることで好循環に転じることができる」と話す。斉藤卓弥・北大特任教授は「対人関係が悪化したり問題行動が顕在化したりする前の小学校低学年のうちにペアトレを受けてほしい」という。