認知症とともに  「徘徊」と呼ばないで

2018/04/08

朝日新聞 2018年3月25日

 認知症の人が1人で外出したり、道に迷ったりすることを「徘徊」と呼んできた。だが認知症の本人からその呼び方をやめてほしいという声があがり、自治体などで「徘徊」を使わない動きが広がっている。

 町田市で活動する「認知症とともに歩む人・本人会議」メンバーの生川幹雄さん(68) は、「徘徊と呼ばれるのは受け入れられない」と話す。散歩中に自分がどこにいるのかわからなくなった経験があるが、「散歩という目的があって出かけた。道がわからず怖かったが、家に帰らなければと意識していた。徘徊ではないと思う」と話す。

 認知症の本人が政策提言などに取り組む「日本認知症本人ワーキンググループ」は、2016年に公表した「本人からの提案」で、「私たちは、自分なりの理由や目的があって外に出かける」「外出を過剰に危険視して、監視や制止をしないで」などと訴えた。

 こうした意見を受け、一部自治体が見直しに動く。福岡県大牟田市は、「認知症SOSネットワーク模擬訓練」のスローガンも「安心して徘徊できる町」から「安心して外出できる町」に変えた。兵庫県は、16年に作成した見守りSOSネットワーク構築の手引き書で、「徘徊」を使わないと明記した。

 厚生労働省は、使用制限などの明確な取り決めはないが「当事者の意見をふまえ、新たな文書や行政説明などでは使わないようにしている」とする。

 *朝日新聞は今後原則として使わない