強制不妊手術 沈黙破る医師 「親の思い受けた面が…」

2018/03/15

毎日新聞 2018年2月23日

 旧優生保護法の下、障害者らへの強制不妊手術に関わった医師らが沈黙を破り始めた。北海道で手術に関わった80代の医師が毎日新聞の取材に応じた。医師は、公立病院に勤務していた67年、精神科医の申請による道優生保護審査会の審査結果を受け、当時20歳くらいの女性の不妊手術を執刀した。女性には、重度の知的障害と聴覚障害があり「意思疎通が困難な状態」だった。この医師は「喜んで不妊手術をする医師はいない」と語り、「当時、障害のある子が生まれると親だけで世話をするのはとても大変だった。子の将来を心配する親の思いを受けた面があったのではないか。審査会の決定を受け、やむを得ず執刀した産婦人科医は多かったのではないか」と続けた。

 一方、北海道衛生部などは56年作成の冊子で「親も子も(障害があり)親族が一切の世話を見るなど、家庭にも社会にも大きな負担となっている」などと記述。手術の推進が「新しい日本の再建を希求する切実な課題に対する一つの活路」と強調していた。最近北海道の手術件数が全国最多の2593件と知った医師は「これほど多いとは、私の実感とは全く違う。あえて(対象者を)見つけて手術しようとしない限り、こんな数にはならないのでは」と推測した。医師は現在、障害者団体の代表を務めている。「障害児が生まれたとき、親のショックが大きいのは今も変わらない。障害を一つの個性と受け止め、安心してくらせるような社会にしたい」と言った。

 東京都立病院時代に手術の申請に関わった杉並区の精神科医、岡田靖雄さん(86)も「当時は家族がいなければ障害者は生きていけないとの考えがあった」とし、家族が手術を推進した背景を指摘する。その上で「そのためにずさんな審査が行われた事例は多いと思う。国会で救済制度作りに向けた動きが出ているが。実態解明がなおざりにならないようにしてほしい」と国に全国的な実態調査を急ぐよう求める。