相模原の障害者施設殺傷事件 ラジオ番組に 障害者の父で記者、被告と対面した30分

2018/01/07

毎日新聞 2017年12月28日

 RKB毎日放送東京報道部長の神戸金史さん(50)が植松聖被告(27)と面会し、ラジオの報道番組にまとめた。番組は29日夜にRKBラジオとTBSラジオで放送。

 神戸さんの長男は自閉症がある。長い時間かけて接するうち、「長男はこれで長男らしくていいのではないか」と思うようになったという。東京に単身赴任中の昨年7月、相模原事件が起きた。「障害者は不幸をつくることしかできない」という被告の供述を聞いて「心の中をやすりでこすられている」ような感覚に陥った。長男や家族を思う気持ちをフェイスブックにつづると大きな反響を呼び、その後「障害を持つ息子へ」と題した本を出版した。しかし、事件を取材する気持ちにはなれず、現場に足が向かなかった。「惨劇の現場を直視する体力がなかった」と振り返る。

 今年秋、「親としての思いを伝えるべきだ」と被告に面会を求める手紙を書き、長男の写真が表紙になっている本も同封した。約10日後、面会に応じるとの返事が届いたが、「自分の子どもがかわいいのは当然かもしれませんが、いつまで生かしておくつもりでしょうか」とも書かれていた。恐怖と気味の悪さを感じた。

 12月12日朝、横浜拘置所で面会。被告は丁寧な口調で応じ、ごく普通の青年に見えた。襲撃対象をどう選別したのか、被告が「意思疎通できない人」を指して呼ぶ「心失者」とはどんな人なのか、を尋ねた。「名前と、年齢と、住所を言えない人です」との答えに、「そんな単純な基準で線を引くのか」と驚き、怒りが湧くとともに、恐れを感じなくなった。30分の面会で、被告は施設で働いていたのに発達障害の人が取る行動などについてよく知らないことがわかり、思い込みで短期間のうちに計画を立てていたことが浮かび上がった。

 番組では、面会に立ち会ったプロデューサーのTBSラジオ・ニュース統括編集長の鳥山穣さん(38)が被告役、神戸さんが本人役となり、面会の様子を音声でできるだけ忠実に再現した。神戸さんは、植松被告が障害者との間に線を引いたように、自分も被告との間に線を引いていたのではないかと考えるようになった。また会いに行こうと思っている。次は父としてよりも、もっと記者として。