障害者に「育児能力ない」「生まれたら困窮」 不妊強制 偏見の記録

2017/12/23

朝日新聞 2017年12月17日

 旧優生保護法に基づいて障害者らに行われた強制的な不妊手術に関する公文書、約80件分が神奈川県立公文書館で見つかった。文書は、1962年度、70年度などのもので、立命館大生存学研究センターの利光恵子・客員研究員が見つけて分析し、10月にあった障害学会で発表した。

 「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とした同法は、遺伝性と診断された病気、精神障害や知的障害のある人に、本人同意なしの不妊手術を認めていた。

 文書を分析した利光さんは、「子どもを育てられないといった差別や偏見を前提に、生殖機能を奪うという人権侵害が粛々と進められていたことにがくぜんとする」という。東京大大学院の市野川容孝教授(医療社会学)は。障害者が子どもを育てるための支援が整っていない中、「本人のため」だとして手術が行われた可能性がある、と指摘。「社会的な理由が優性政策に結びつけられることを、記録で裏付けた。被害者や関係者をたどり、実態解明につなげなくてはならない」と話す。

 被害者救済を阻んでいるのは、行政資料が破棄・紛失されていることだ。宮城県で今年7月、手術された記録の開示を受けた女性は、本人が記録を入手できた唯一の例とみられる。女性は国に謝罪と賠償を求め、来年1月にも提訴する。弁護団によると、こうした手術の違憲性を問う全国初の訴訟という。