報告 やまゆり園事件から1年(中)

2017/08/01

朝日新聞 2017年7月25日

 事件当時約150人が暮らしていた園は、建て替えが決まり、将来像をめぐる議論が続く。多くの入居者は今、県が用意した仮の施設「津久井やまゆり園芹が谷園者」で暮らしている。
 入居者の尾野一矢さん(44)は、事件後入った病院では「やまゆり、帰る」と繰り返していたが、別の施設に移りしばらくすると、「やまゆり、終わり」とつぶやいたという。父親は、やまゆり園を「終のすみかだと思っている。建て替える場合は、今までと同じような施設にしてほしい」と語る。
 やまゆり園が開設されたのは、1964年。障害者を受け入れ、生活を支援する大規模施設は「コロニー」と呼ばれ、当時各地で建設が進んだ。81年「国際障害者年」をきっかけに、障害者も健常者と変わりない生活をすべきだとの考えが広がり、近年は施設を小規模にし、地域に根差した生活を送る「地域移行」が主流となっている。
 県は今年1月、同じ場所に大規模施設を建てる方針を示したが、障害者団体などから「地域移行に逆行する」と異論が噴出。県が設けた有識者会議は今月18日、複数の小規模施設に分散させる案を示した。
 ただ、入居者家族の意見は割れている。「家族にとって苦労の末にやっとたどり着いた場所。現在地以外は現実的でない」という意見。一方、「入所者がもっと社会に出て、交流しやすい環境にするべきだ。施設はなるべく縮小した方がいい」という意見もある。
 有識者会議の検討結果を踏まえ、県が結論を出す。