知的障害者の若者 「大学」で青春

2017/07/26

朝日新聞 2017年7月22日

 知的障害のある若者の学びの場、疑似的な「大学」の開設が相次いでいる。
 福岡市の「カレッジ福岡」は、国の福祉制度を使って2012年にできた4年制の「福祉型大学」で、社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会が運営する。現在、特別支援学校高等部を卒業した知的障害者29人が「一般教養」「文化芸術」「スポーツ」など10教科を学んでいる。同会の長谷川理事長(56)は、知的障害のある次女の経験から、「仲間と青春を楽しみ、時に悩み、成長する時間がもっと必要だと考えた」という。「もっと学ばせたい」と考える親は多く、近年は障害者総合支援法の自立訓練事業(2年間)を使って「福祉型専攻科」を設ける社会福祉法人が増えている。長谷川理事長は、これに就労移行支援事業(2年間)を組み合わせて4年制とすることを考えた。給付金が支給され、利用は原則無料だ。賛同を集め、現在5カ所にカレッジが誕生している。カレッジ北九州2年生の母親は、娘に自信が生まれ、意欲が増し、生き生きしている、という。
 福岡女学院の猪狩恵美子教授(特別支援教育)は「青年期にじっくりコミュニケーションスキルを磨き、失敗しても立ち直る経験を積むには『大学』のような時間が必要だ」と話す。
 同様の大学は、大津市、伊丹市、大阪市、名古屋市などにも生まれている。 「福祉」の枠内でなく「教育」の中で位置づけるところもある。
 日本が2014年に批准した障害者権利条約には「締約国は、障害者が差別なしに(中略)一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受できることを確保する」とある。名古屋市の「見晴台学園大学」の学長を務める田中良三・愛知県立大名誉教授(71)は「障害の有無にかかわらず、学ぶ思いのある人の進学機会の平等は保障されるべきだ。日本も議論する時に来ている」と話す。