
社説 バニラ・エアと車椅子 「もっとできる」の契機に
2017/07/19
毎日新聞 2017年7月2日
格安航空会社(LCC)バニラ・エアを利用した車いすの男性が、奄美空港で搭乗する際、タラップの階段を腕の力ではい上がっていたことが明らかになり、論議を呼んでいる。
バニラ・エアは男性に謝罪し、設備を整える対策をとった。ところが、逆に男性がインターネット上で、「確信犯」「クレイマー」などと非難・中傷される事態に発展した。
障害者差別解消法が施行されて1年以上たつが、「差別解消」とはほど遠い現実が浮き彫りになった。同法は、障害の有無にかかわらず、個人が力を十分発揮できる社会を目指している。過重な負担にならない範囲で、障害者の行動の妨げを取り除く努力「合理的配慮」を行政や企業に義務づけた。今回問われるのは、バニラ・エアができることをしようとしたか、合理的配慮に怠りはなかったか、という点だ。同社は、この問題が報じられるや、階段昇降機も設置した。やろうとすればできたことを、していなかったに過ぎない。
男性への非難には、「設備の整った航空会社を利用すればいい」というものもあったが、運賃が安いから障害者はあきらめよ、というのは通らない。個人によって異なる事情に、可能な限り対応しようとする備えと柔軟な心が肝心だ。
障害の種類もさまざまである。バニラ・エアに限らず、今回の出来事を「もっとできること」を考える契機としたい。





