
相模原障害者殺傷事件考える市民講座
毎日新聞 2017年5月26日
表記の事件から26日で10カ月になる。障害者の権利擁護に取り組む当事者の間では、事件への社会的関心が低くなる一方で、障害者を排除する空気が社会に広がっているのではないかとの危機感が深まっている。
市民講座は、NPO法人「自立生活夢宙(むちゅう)センター」(大阪市住之江区)の主催で先月大阪市住之江区で開かれ、障害当事者や福祉関係者ら約120人が集まった。「DPI(障害者インターナショナル)日本会議」(東京都千代田区)副議長の尾上浩二さん(57)の講演の他、知的障害や身体障害、精神障害のある当事者が事件への思いを語った。
尾上さんは「障害のある私たちが今も受けている衝撃と、事件をどんどん忘れていく一般社会とのギャップに違和感を覚える」と語気を強めた。事件の一報を聞いたとき、尾上さんは幼少期の施設入所体験を思い出したという。「身体の機能訓練」の名目で、夜間もベッドに体を固定されていた。事件の被害者の身に起こったことを、自身の経験と重ね合わせ、「身もだえするような恐怖を感じた」と振り返る。
事件の約1週間後、知的障害のある女性からのメールには「心が壊れそう。テレビを見るのが怖い」とあった。「優生思想に深く切り込むコメントがないまま、被告の言説が拡散されていった」ことの影響だとみる。
被告の犯行予告の手紙を見て尾上さんは「貧弱な障害者観」を指摘する。「彼は、いろいろな障害のある人との具体的な出会いがなく、豊かな障害者観を持ち得なかったのだろう」と語った。
背景にあるのは、日本で長年続いてきた「分離・別学教育」、その延長線上にある入所施設を中心とした隔離政策だ。「障害のある人とない人が出合いにくくさせられてきた歴史がある」と尾上さんは語った。
優生思想は決して過去の話ではない。優生保護法は1996年まであった。兵庫県では60,70年代に障害や病気を「不幸」と決めつけ、生まれるのを未然に防ぐ「不幸な子どもの生まれない県民運動」が行政を挙げて推進されていた。「障害者運動関係者の間では知られるが、一般社会でもっと知られるべきだ」と指摘する。
事件を受けての神奈川県や国の対策が、施設の防犯体制や精神医療の問題に特化している点を、尾上さんは「事件の本質がとらえられていない」と批判。口座に集まった障害当事者らに「誰もが排除されないインクルーシブな社会づくりを進めていきたい。みなさんが街に出て、障害者が生きている姿を見てもらうことが、事件の再発防止につながると思う」と呼びかけた。





