(続・みんなちがっていい:下)ペッパーと授業 自立への道

2017/07/18

朝日新聞 2017年4月24日

 障害者差別解消法は、障害がある子どもが差別を感じずに学べる環境づくりを学校現場に求めている。特別支援学校に在籍しながらプログラミングを学び、デジタルデザイナーを目指す少年がいる。
 大分県立別府支援学校の馬塲勇希さんは、小2で広汎性発達障害と診断された。言われたことはすぐ忘れてしまう、一方的に話し他の子とうまく遊べない、両親は不安を感じ、小3から特別支援学級に移った。そこでもうまくいかず、小5から支援学校に転校した。
 転校当時の馬塲さんは学習全体に拒否感があった。タブレット端末には慣れていたが、学習には使いたがらなかった。担任の岡本崇教諭(46)が、ロボットによる教育を研究するソフトバンクとエデュアスからペッパーを借りて授業で活用してみたところ、思うようにならないと「どうせできん」と投げ出していた馬塲さんも面白がった。「予想外の事態にも柔軟に対応できるようになった」と岡本さんはみる。タブレットでも学習も始め、母親は息子の自尊心と学習意欲が急激に高まったと痛感した。小6の授業で、「ペッパーをプロの歌手にしよう」と岡本さんが提案し、プログラミングに取り組んだ。歌手なら、お客さんに好印象を与える態度や受け答えが必要で、一つ一つを考えプログラミングすることで、他人に対する姿勢も学べた。
 ペッパーを「半分友だち」だという馬塲さんは、この春中学部に進んだ。教育環境を維持するため、新しい担任もプログラミングに取り組む。将来親子でデジタルデザインの会社を起こそうと夢見る母親は、「本来、特別支援学校に入らなくても、その子の障害に合わせた教育が受けられるのが理想だが、現実は違う。差別をなくすのなら、学ぶ場所や教育内容を選ぶ権利がもっとほしい」と話す。