補助犬を受け入れる社会に

2017/04/29

毎日新聞 2017年4月11日

発言  朴 喜子(日本補助犬協会代表理事・補助犬ガイド士)

 障害のある方に必要とされるパートナーが補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)だ。1年前に施行された障害者差別解消法は、補助犬同伴での入店拒否やサービスの制限を不当な差別にあたると定めている。社会の補助犬受入れ体制の確立を急ぐ必要がある。
 補助犬について法制化した身体障害者補助犬法は15年前、2002年に施行された。不特定多数が利用する一般の施設は、同伴する補助犬を拒んではならないと規定している。上記の解消法は同伴拒否を「差別」と踏み込んだ。しかし「受け入れ拒否」は絶えない。補助犬を「迷惑」とする意識の改革が重要だ。
 補助犬を育成するのはとても大変なことで、費用もかかる。育成団体の財政基盤がしっかりしていないとスタッフ採用もままならないが、都道府県の育成費支援事業は十分とは言えず、多くを寄付金に頼っている。補助犬は福祉サービスとして障害者に無償貸与されるが、支援対象にならなければすべて育成団体の持ち出しになる。財政面での支援強化も必要だ。
 補助犬は100頭余と少なく、しかもほとんどが盲導犬だ。介助犬や聴導犬の潜在的希望者がどのくらいいるか正確な数字はない。国は実態を把握し、補助犬育成に向けた中長期的政策を立案してほしい。補助犬と暮らす人が安心して社会生活をおくるには、補助犬が広く社会に認知され、人々が慣れ親しむような環境整備がいる。20年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。先のリオ大会のように「補助犬マーク」の表示や大会ボランティアへの教育などを通し配慮と啓発をすすめる、補助犬トイレの整備する、など取り組むべき課題は多い。