障害の壁 なくして学ぼう  

2017/04/01

朝日新聞 2017年4月1日
 
 誰もが自分らしく生られるよう、障害を理由にした差別を禁じた「障害者差別解消法」の施行から1年。対応を求められている大学で、教職員や学生に理解を深めてもらうための取り組みが広がっている。
 愛知県美浜町の日本福祉大では3月上旬、障害への理解を深める学生向けの研修会が開かれた。障害のある学生の支援窓口「学生支援センター」が主催。11人が車いすの基本操作、視覚障害者の誘導方法、発達障害の人への接し方などを学び、4月からセンターのスタッフとして活動する。視覚障害者の感覚を体験した学生は「信頼していないと怖くて身を預けられない。たくさんコミュニケーションをとろうと思った」。
  「当事者の視点を知ってほしい」と参加した、車いすで生活する早川洋史さん(22)はこの春大学を卒業する。「友達にいろいろと手伝ってもらった。周りに恵まれていた」と4年間を振り返る。障害のある学生との関わり方について、「支援するときはしっかり支援し、それ以外は友だちや先輩後輩として接してほしい」と願った。
 日本福祉大には、1953年の開学時から体が不自由な学生がおり、支援の歴史は長い。日本学生支援機構の修学支援ネットワークの拠点校でもある。2016年度は障害のある学生が111人在籍し、238人がボランティアに登録している。17年度中には、より質の高い支援のために支援の専門性を高めた学生を大学独自に認定する制度も始める予定。柏倉秀克センター長は「責任感が高まり、その学生にとっても就職活動でのアピールにもなる」と話す。昨年11月には教員向けの研修に障害のある学生と支援にあたる学生を招き、必要な配慮について話をしてもらった。柏倉センター長は「障害のある人もない人も共に生きていくために何が必要かを自然に考えられる人材を育てることが求められている」と話す。
 名古屋大(名古屋市)では2月中旬、学生や教職員を対象に精神・発達障害に関するセミナーを開き、約100人が参加した。障害者支援室の佐藤剛介副室長は「周囲の理解なしに、大学の障害者支援はありえない」と話す。障害の有無にかかわらずだれもが使いやすいように施設や環境を整える「ユニバーサルデザイン化」に向けたガイドライン作りでは、障害のある学生と教職員が一緒に学内を歩き、意見を募った。参加した太幡英亮准教授(建築計画学)は「聞いて初めて分かったこともあり、意義は大きい」、弱視の学生も「自分の目線が必要なんだと初めて知った」と話す。昨秋からは、障害のある学生が施設整備のアドバイザーになる制度も始めた。
 大学がもう一つ目指すのは、「統一的支援」だ。学部や教員によって支援に差が出ないよう、障害者支援室で大学として統一的に判断する。佐藤副室長は「こうした配慮は『サービス』ではなく、教育を受ける権利として保障されているものだという理解を学内で広めていきたい」と話す。