ろうあ運動に尽力 36人の軌跡

2017/02/14

朝日新聞 2017年1月31日

 フリーカメラマンの豆塚猛さん(62)=京都市が「道 ろうあ運動を支えた人びと」を出版した。豆塚さんは、30年以上前から、ろうあ運動や手話通訳運動に関心を持ち、写真を撮影してきた。この本では、運動に携わった一人ひとりの魅力や生き方を紹介し、運動の歴史を浮かび上がらせている。

 取り上げた一人、故・河合洋祐さんは15歳で脊椎カリエスになり、治療薬ストレプトマイシンの副作用で耳が聞こえなくなった。埼玉県のろう重複障害者の生活労働施設「ふれあいの里どんぐり」の建設に必要な2億円もの募金活動に力を注ぎ、山本おさむさんの漫画「どんぐりに家」のモデルにもなった。

 大阪の弁護士、松本晶行さん(77)も紹介。小学3年の時かかった流行性脳脊髄膜炎の後遺症で聴力を失った。弁護士になって間もなく、聴覚障害者が運転免許を取ることを阻む制度の改正を求める訴訟を手がけた。審理中の1973年、実質的に免許が取れる道が開かれる原動力となった。

 豆塚さんは「戦後、基本的人権の尊重を定める憲法のもとで、差別と闘い平等を求めるろうあ運動に力を注いだ人たちの姿を残したいと思い、取材を続けました」と語っている。