ひと  高次脳機能障害を抱えつつ活動するディジュリドゥ奏者 GOMA(ゴマ)さん(43)

2017/02/10

朝日新聞 2016年12月25日

 豪州の先住民族アボリジニ―がユーカリの木で作る伝統の管楽器に学生時代に出会った。バンドを結成して年約200回のライブを重ねていた7年前、首都高速で追突事故にあった。

 「2度目」の人生が始まる。プロ奏者として活動した10年分記憶は抜け落ちていた。脳損傷による記憶障害と診断された。事故後意識が戻ってきたころは「自分は画家」と思い込んでいた。ただ、吹く感覚は体が覚えていた。娘に導かれて楽器を手にし、5年前のフジロックフェスティバルで再起を果たした。「でも思うように作曲や演奏ができない」。プロとして葛藤を抱える一方、事故後突然始めた点描画は国内外で称賛され、個展も開く。

 同じ障害を持つ人は全国に約42万人。社会の理解が進んでいないと感じ、誰かが困難に直面したとき、自分の生き方が少しでも光になれば」と2016年夏闘病記『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界』を出した。