手話で伝える「目で聴くテレビ」

2017/01/14

毎日新聞 2016年11月29日

 目で聴くテレビは、認定NPO法人「CS障害者放送統一機構」(大阪市北区)が運営する。1995年の阪神淡路大震災後、聴覚障害者からのニュースや危険情報がわからないなどの声をきっかけに、98年に全日本ろうあ連盟と全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、情報通信業(株)アステムの3社で設立。現在、毎週火~金曜の昼夜30分~2時間程度、手話と字幕のついた暮らしの情報番組や映画紹介などを放送。水曜は「クローズアップ現代+」(NHK総合)、木曜は「ひるおび!」(TBS系)と同時間放送の「リアルタイム手話放送」も実施している。

 専用の受信機は8万8900円だが、身体障害者手帳(聴覚障害)があれば自治体から給付を受けられる(一部自己負担、設置工事費は別)。受信料は年間計6300円。同機構の梅田ひろ子理事(61)によると「聴覚障害者や難聴高齢者のほか、手話を学んでいる人も見てくれているようだ」という。

 熊本地震の直後は、4月14日以降、被害を伝えるNHKニュースのリアルタイム手話放送を実施。柳喜代子さん(56)ら約10人の手話通訳士が続けて4日間にわたりニュース時間に通訳した。柳さんは「もっと放送したかったが、予算の問題もあり十分できなかった」と振り返る。

 厚生労働省の調査によると、日本に身障手帳を持つ聴覚障害者は約45万人いる(2014年度)が、難聴に悩む人はもっといるはずだという(同機構)。また別の調査で、日常のコミュニケーション手段について「手話・手話通訳」を選んだ聴覚障害者は18.9%おり(06年、複数回答)、柳さんは手話放送の必要性を訴える。

 補聴器を外すと聞こえないという映画監督の今村彩子さん(36)は、昔の地上波テレビを「字幕がないため内容が分からず、スポーツ中継しか見ていなかった」と振り返る。字幕放送が増え「今ではドラマやドキュメンタリー番組も見ることが増えた」という。「字幕と手話、どちらが見やすいかは個人差がある。地上波でも両方の放送が普及すれば」と強く願っていた。