言葉省いた会話 伝わっている? 発達障害の子、背後の意図わからず苦労

2016/11/03

朝日新聞 2016年11月3日

 幼児が勘違いした事例からわかりやすい話し方につなげている幼稚園を紹介した記事(9月17日)に「幼児に限られることではない」と反響があった。今回は、発達障害の子が学校での会話に苦労している話を取り上げる。

 小学5年生の女児の例。4歳の時に発達障害の診断を受け、現在特別支援学級で学んでいる。医師には、言葉は覚えるが、その言葉を応用することが苦手と言われた。小1の時、国語では毎回「(その日の授業で)習ったところを音読する」という宿題が出た。女児は毎回、4月からそれまでに習ったところを全て音読し、日に日に読む量が増えた。母親が「今習っているところでいい」と言っても、なかなか理解できなかった。低学年のころはそんな出来事が多く、母親はその都度先生の意図を理解できていないことを連絡帳に書き、指示し直してもらった。進級のたびに具体例を伝えるようにした。以前に比べ意図が伝わらないことは減っているが、今でもたまにある。母親は、私たちが気付いていないところで、まだ困っていることがあるかもしれない」と話す。

 白百合女子大教授(発達心理学)で、神奈川県藤沢市のわかふじ幼稚園園長の秦野悦子さんは、自閉スペクトラム症によって、言葉通りに物事を捉え、言葉に表れていない話し手の意図を理解できない傾向がある場合には、話し方に注意が必要という。「言葉の背後にある意図まで理解できず、困惑することがある。経験の少ない子どもではなおさらだ。話す側はあいまいな表現を避けたり、例外や条件があるときはきちんと伝えるなど、具体的な話し方を心がけるべきだ」、自閉スペクトラム症に限らず「会話の意図を理解し合うには、発言の前提となる内容を話し手・聞き手で共有することが大切」と話す。