障害者 生活楽しむ支援を

2016/10/30

毎日新聞 2016年10月8日

 差別解消法施行半年特別インタビューとして、ともに親族に障害者がおり、障害者支援に深くかかわってきた米国のキャロライン・ケネディ駐日大使とトム・ハーキンス前上院議員に、障害者の暮らしやすい社会について尋ねた。米大使館で行った。

 ケネディ大使は3年前日本に赴任してから、障害者施設を訪れたりして当事者と交流してきた。働き方の先駆例を視察し、「障害者が社会に貢献していることを示す、いい例だ」「先駆的取り組みをさらに支援し、全国に広まればいいと思う」と語った。また、最新技術を駆使した支援について「テクノロジーの進歩を障害者のために生かすべきだ」とも強調した。

 ハーキンス氏は1990年、世界で初めて障害者への差別禁止をうたった「米国の差別禁止法」(ADA)の成立に尽力した。日本の差別禁止法について「障害者が社会と密接にかかわりながら生きていけるようになると思う」と歓迎した。

 ケネディ家は長年障害者支援活動に取り組み、その活動は障害を持った人々が参加する運動の祭典、スペシャルオリンピックスの開催へとつながってきた。日本でも、95年から知的障害者の国内競技大会であるスペシャルオリンピックスが開かれている。ケネディ大使は、スポーツ分野での障害者の活躍が世界的潮流になっていると指摘、日本でも同様の盛り上がりが生まれ、障害者の社会参加への理解が深まると述べた。

 一方、今年7月、相模原市で悲惨な事件が起きた。ハーキンス氏は「容疑者の考えは到底許容できないし、恐ろしい考えだ。障害のある人は私たちの兄弟であり、家族だ。誰もが病気や事故で障害者になる可能性があることを忘れてはいけない」と警鐘を鳴らした。さらに「支援があれば、(施設外で)働きながら映画や野球観戦を楽しみ、生活を楽しむことができるのに、どうして多くの人が施設で暮らしていたかも考えないといけない」と指摘。社会で障害者が共に生きていける施策作りの必要性も訴えた。ハーキンス氏は聴力障害がある兄がいたことから、差別解消法に取り組んだ。今回は国際的な差別解消法の広がりを訴える狙いで来日した。