ダウン症の子を持つ家族 ひたむきな日常に光

2016/10/06

産経新聞 2016年9月30日

 昨秋出版された、ダウン症の子を持つ家族の日常を描いた『ダウン症って不幸ですか?』(宝島社)の増刷が決まった。著者は放送作家・姫路まさのりさん(35)。仕事をしながら趣味のダンスに励んだり、家族と晩酌したりするダウン症の人々の日常が評判となり、増刷へとつながった。

 姫路さんは、2013年に始まった新出生前診断に疑問を抱いた。検査の開始前年、陽性となった妊婦の中絶が増えるだろうとの憶測が飛び交う中、知り合いのダウン症の子が「私って生まれてこない方が良かったのかな」と問いかけた。「そんなことはない」と多くの人に伝えられるよう、自分の知っている現状を本にしようと決意した。

 登場するのは5家族。取材当時2~48歳のダウン症の人の出生から進学、就職までの、家族なら必ず経験する悩みが前向きにつづられる。描かれた姿からは「短命」「激しい運動が苦手」といった世間が抱くイメージは覆される。「一部のイメージだけで、実際のダウン症を知らない人に読んでほしい」と姫路さん。

 姫路さんは中学2年のころ、テレビで絵の上手なダウン症児が取り上げられているのを見て、「そこまで違うことなのかな」と思った。社会人になり、空いた時間はダウン症の子や家族らから話を聞いた。笑顔があふれ、どの親も我が子の可能性を広げながら生きていた。

 念願の本を出版し、増刷が決まった直後の今年7月、相模原事件が起きた。障害のある読者から「つらい」「生きていていいの?」という声。「存在否定という点で新出生前診断と似ているが、インパクトが大きすぎる」。自分の活動は道半ばと痛感した。「容疑者は『障害者は不幸だ』と言うが、それは彼の価値観にすぎない。決めつけないでほしい」と語る。