脱・感動ポルノ

2016/10/05

毎日新聞 9月28日

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 記者をしていると、障害を持つ人に話を聞き、記事を書く機会が少なくない。だから8月末のNHKの番組で、障害者を過剰に感動的に描くことは「感動ポルノ」だと批判が上がったことにハッとした。

 感動ポルノ(inspiration porn)という言葉は、オーストラリア人のステラ・ヤングさんが命名。骨に難病を持つ障害者だった。15歳の時、ヤングさんを功績賞に推薦したいと連絡があった。両親は「ありがたいのですが、彼女には何の功績もありませんよ」と応じた。そんな連絡が来たのは、障害を持って暮らしているだけで立派、というウソが広まっているからだと彼女は指摘する。2年前に亡くなったが、彼女の動画が非営利団体TED(米)によってインターネットで公開されている。彼女は、「手の無い少女が口にペンをくわえ絵を描く姿、義肢で走る子供、みんな身体能力を最大限に引き出しているだけなのに『感動した』『勇敢だ』とたたえられる。障害者は人間ではなく、障害のない人を感動させる『物』として扱われている」と語っている。

 リオデジャネイロ・パラリンピックのメディア報道に「障害を乗り越えたストーリーに偏りがちではないか」という声も上がった。障害の有無を問わず真の成果で評価する社会が、東京でパラリンピックが開かれるころには実現しているだろうか。