視覚障害者の足 広がる 大阪でも2人乗りOK

2016/10/06

大阪日日新聞 9月24日

 ペダル装置が縦列に付いた2人乗りの自転車「タンデム自転車」の公道での走行が、8月から大阪府で可能になった。視覚障害者やボランティア団体でつくる「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」が府公安委員会に要望していた。

 前部に乗る「パイロット」の声に合わせて、後部に乗る「ストーカ」はハンドルをしっかり持ちペダルをこぐだけ。2人で会話を楽しみながら、風を切る爽快感を楽しめる。車体が長いので小回りが利きにくいタンデム自転車。大阪府はこれまで、3輪タイプのタンデム自転車の公道走行は認めていたが、2輪タイプは走行できなかった。楽しむ会は、視覚障害者の移動手段の確保のほか、運動不足やストレス解消のためのスポーツとして「タンデム自転車に乗りたい」の声に応えようと2012年に誕生。タンデム自転車の貸し出しのほか、年間約10回の体験走行会やパイロットの育成などを行っている。兵庫県は以前から2輪タンデム自転車の走行を認めており、京都府も昨年に認可した。「走行できる府県がつながると便利になる」と、5月に府公安委へ要望書を提出した。

 府警本部はテスト走行を行い、低速での安定性や制動性などの安全性を確認。6月1日に道路交通規則の一部が改正された。現在、全国で認可されているのは13府県。

 楽しむ会では、乗車マニュアルを作成するなど、公道での安全走行に力を入れる。自身も視覚障害を持つ楽しむ会会長の鈴木昭二さん(66)は「パラリンピックにはタンデム2輪があり、スポーツとしての一面も持つ。大阪の街中で、誰もが乗れるような環境づくりを働き掛けたい」と話していた。

 タンデム自転車は普通自転車に属さないので、自転車は走行できてもタンデム自転車では走行できない場所もある。府警本部交通総務課は「自転車の走行が許可された歩道でも走ることができないなど注意が必要。車長が長いので、ルールに従って安全に乗ってもらいたい」と呼び掛けている。