口唇口蓋裂 新たな治療

2016/09/25

朝日新聞 2016年9月21日

 生まれつき唇や上あごにすき間などがある「口唇口蓋裂」に対し、耳の軟骨細胞を使って鼻の形を整える新たな治療法の開発が進んでいる。

 口唇口蓋裂の赤ちゃんが生まれる割合は、国内では約500人に1人と言われる。治療は、あごの発達に応じて出生直後から成長期、成長終了まで段階的に進められる。口唇口蓋裂で鼻の変形があった会社員の男性(25)は、大学4年の夏、自分の耳の軟骨細胞で鼻の軟骨を再生治療する臨床研究に参加した。骨盤などから取った骨や軟骨を移植する従来の方法と比べ、体の負担が小さいという。男性は「痛みが少なくて、うれしかった」という。東京大学と共同で開発したIT企業「富士ソフト」(横浜市)によると、治療は17歳以上を想定、再生医療製品として国の承認を得るための臨床試験中で、来年度の承認取得を目指しているという。

 また、人工歯根を埋めて義歯を取り付けるインプラント治療に、今年4月から公的医療保険が使えるようになった。歯のない部分の治療は16~18歳以降となる。保育士の女性(23)は一昨年、一本分の歯の欠けた部分にインプラントを埋める手術を受けたが、当時医療保険は使えす約40万円かかった。日本口腔外科学会の朝波惣一郎幹事は、「生活の質を高めるもので、ぜいたくではない」と話す。

 口唇口蓋裂の治療は、形成外科や口腔外科が中心となるが、耳鼻咽喉科医、歯科医、言語聴覚士、臨床心理士との連携が欠かせない。口唇口蓋裂の治療に取り組む形成外科、口腔外科がある病院は全国で300ほどとみられている。患者数に比べて多く、病院によって治療方法や技術に差があるとされる。このため、日本口蓋裂学会は診療指針を作成中だ。歯科医や耳鼻咽喉科医、言語聴覚士らの意見も取り入れ、来年度中の完成を目指す。