「障害者=感動」に一石 

2016/09/19

朝日新聞 2016年9月3日

 「24時間テレビ」(日本テレビ系)のNHK裏番組に反響が続いている。番組は「バリバラ」(Eテレ・毎日曜夜)で、「バリアフリー・バラエティー」の略。さまざまなテーマについて、障害者ら出演者が、笑いを交えつつ本音を語る。

 28日は、「検証!〈障害者×感動〉の方程式」と題した生放送。ちょうど「24時間テレビ」がフィナーレを迎える時間帯。SNSなどでは「バリバラが24時間テレビにケンカを売っている」と話題になり、放送後も「NHKやるな!共感できた」「ずっと考えていきたいテーマをもらった感じ」などの声が。

 番組の冒頭で、豪州のジャーナリストで障害者の故ステラ・ヤングさんのスピーチ映像を流した。ステラさんは、感動や勇気をかき立てるための道具として障害者が使われ、描かれることを、「感動ポルノ」と表現した。

 NHKは朝日新聞の取材に「障害者=かわいそう、頑張っている、以外の価値観を提示していくことを大切にしている。福祉分野になじみがない人にも関心を持ってもらえたのではないか」とコメントしている。日本テレビ広報部は「他局の番組に関する質問にはお答えしていない」とした。

 両方の番組に出演した大橋グレース愛喜恵さん(28)は、「どちらが良い悪いと言いたいわけではない。障害者のありのままを紹介した結果、感動が生まれるのはいいと思う」としつつ、「感動ポルノが生まれ続けるのは視聴者が求めてきたから。まずはメディアが障害者の取り上げ方を変えることで、視聴者の意識も変わっていくようになれば」と話す。

 バリバラを見た障害者支援NPO「ドリーム」(名古屋市)の伊藤圭太理事(32)は「メディアの伝え方について、当事者が思いを語ったのが面白い。問題提起になったのでは」「障害者を感動的に描く手法は好まないが、映像をきっかけに支援団体への寄付につながることもあり、全てが悪いとは言い切れない」と考える。脳に障害があり、手足が不自由な長男と暮らす女性は「私たちにとって介助のある生活は、健常者が歯を磨いたり顔を洗ったりするのと同じ日常。特別視せずに伝えてほしい」と訴える。