街で障害者を手助け まず声かけ 望む方法尋ねて

2016/05/22

朝日新聞 2016年5月22日

 困っている様子の障害のある人を見かけ、手助けしたい時どうすればいいか、基本的な声のかけ方や心構えを紹介する。

 神戸市の岸田ひろ美さん(47)は8年前に大動脈解離で倒れ、車いすを利用し始めた。現在、障害のある人が暮らしやすい環境づくりを提案するコンサルティング会社「ミライロ」(本社・大阪市)の所属講師を務め、企業や市民向けの講演は年160回以上だ。
 どう声をかけてよいか分からないという人に勧めるのは、「お手伝いすることはありますか?」とまず声をかけること。「ここからコミュニケーションが始まる魔法の言葉なんですよ」。岸田さんも周囲からのこの一言に救われた思いがするという。
 でも断られたら? 「自分のペースで何とかしたいと思う人や、注目されるのを敬遠する人もいます。でも、気にかけてくれるのはうれしい」。 手助けの方法が分からず声をかけるのをためらいがちだが、「最善のサポート方法は本人が教えてくれます」。必要な手助けは人によってさまざま。何に困っていて、どのようにすればいいかを聞いてみよう。
 東京都心身障害者福祉センターのリーフレット「障害の理解のために」も参考になる。どんな時に困っているのかや、対応の仕方をイラスト入りで解説。精神障害や高次脳機能障害など7種類あり、インターネットでダウンロードできる。
 たとえば手話ができなくても筆談や口の動きで伝える方法があること、その際短い文でわかりやすく、顔を相手に向けてはっきり口を動かす、などコミュニケーションの方法を紹介。視覚障害のある人の誘導の際は、階段前でいったん止まり、「上り階段です」などと具体的に伝える、知的障害の人にはゆっくり、わかりやすい言葉で、といったコツもわかる。地域支援課長の小林由香子さんは「どんな時に不安や不便を感じているかを知ることは、障害の理解につながり、手助けにも役立つ」と話す。
 横浜市障害者社会参加推進センター事務局の富永直美さん(48)は、障害のある人に声をかけたとき、近くにいた男性から「私にも障害がある。あなたのような人がいてうれしい」と言われたことがある。富永さんは「声をかけるのは勇気が要ります。でも、障害のある人が外出するはずみになるような気遣いが広がればと思います」。