
スクールクライシス学校危機 心と命を救おう 障害者差別解消法施行
毎日新聞 2016年4月23日
武田さち子(NPO「エンジェルハートプロジェクト」理事)
公的機関に配慮義務 / 自分のものさしで他人を測るな
2006年に国連で「障害者の権利に関する条約」が採択され、日本も署名した。この条約内容を実現するための国内法制度の整備の一環として、13年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、今年4月1日から施行された。
この法律は、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的としている。
自治体や公的機関には、障害を考慮した環境整備をする「合理的配慮」が義務付けられており、公立学校も対象だ。私立学校や民間施設には努力義務が課せられている。この法律で「障害者」とは、身体障害のある人、知的障害のある人(発達障害のある人も含む)、その他の心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会の中にあるバリアーによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象だ。
様々な制限は、障害だけが原因ではなく、社会における様々な障壁によっても生じるという考え方がもとになっている。義務や努力義務が課せられているのは学校や教職員だが、私たち一人一人も差別を解消するための努力をしなければならない。
いま障害を持っていなくても、いつ当事者になるかわからない。重い病気やけがをすれば、体を自由に動かすことができなくなる。脳や精神に障害が出ることもある。また年をとれば誰でも、小さな文字が読みづらくなったり、耳が聞こえづらくなったり、足腰が弱って動けなくなったりする。障害のある人にやさしい街や施設は、誰でもが暮らしやすい場所になるだろう。
障害にはいろいろな種類があり、ニーズもさまざまだ。ある障害を持った人たちには助けになることでも、別の障害を持つ人たちや障害を持っていない人たちにとっては迷惑なこともある。私たちは障害についてもっと知らなくてはならない。
障害のある人たちを苦しめるのは、制度や設備だけではなく、周囲の人たちの無理解や偏見だ。得に精神障害や発達障害など、見た目ではわからない障害を持つ人たちは、周囲から「努力が足りない」「甘えている」などといわれ、つらい思いをすることがある。目の見えない人に「見えるように努力しなさいというのが無理なことのように、障害によっては、人の何倍もの努力が必要だったり、どれだけ努力してもできなかったりすることもある。安易に自分のものさしで、他人の行動を測らないようにしよう。
想像力、共感力、コミュニケーション力を高めよう
理由もなく避けたり、怖がったり、ばかにする行為は相手を傷つける。いつの間にか染みついた偏見がないか自己チェックをしよう。何をどう配慮し、手伝ったらよいかわからない時には、当事者や家族、介助者など、その人に必要なことを知っている人に聞く。案外、自分たちでは遠慮して、言いたくても言えないことがある。
このたび熊本を中心とする九州地方で大規模な震災が発生した。このようなときには誰でもが自分のことだけで精いっぱいで、他人のことに関わっていられない心理になるのは自然なことだ。しかし、みんなが困っている時には、障害のある人たちやその家族は、私たちが想像もできないほどの数々の困難を抱えていることが少なくない。こんな時こそ、周囲の「何か困っていることはありませんか」「私にお手伝いできることはありますか」の一言に救われるだろう。
解決できることは少ないかもしれないが、工夫と、ちょっとした周囲の配慮や理解で、当事者やその家族が楽になることもある。障害のあるなしに関わらず、自分とは異なる相手の立場や状況を想像する「想像力」、つらい気持ちに寄り添う「共感力」、相手の伝えたいことをきちんと受け止め、自分の気持ちや用件など、伝えたいことをきちんと伝えることのできる「コミュニケーション力」を高めよう。





