障害者と就労(上)

2016/04/10

朝日新聞 2016年4月6日

 4月の改正障害者雇用促進法施行を機に、就労の現状と課題を2回で伝える。

攻めて働く障害者 育成
 「会社は、売り上げから払う。ということは、売り上げがないと給料はもらえないんですか?」
 「その通り。給料は『もらう』ものではなく、みんなで『稼ぐ』ものです」
 「はい、頑張ります」
 食品大手キューピーの特例子会社、キューピーあい(東京)が年2回開く社内向け経営説明会。発達障害がある社員からの素朴な質問に、社長の庄司浩(59)さんは手応えを感じつつ、働くことの意味を語りかけた。
 社員110人の約6割が障害者。グループ内外から様々な仕事を受注する。単に障害者雇用率に貢献するだけの会社ではない。2003年の設立後、社員自ら考えた目標は「雇われているのではなく、自分が会社を支える意識に変わる」。従業員や会社の「自立」を経営思想の柱に掲げる。
 攻めの姿勢で働いてもらうためのハード面整備は当たり前、ソフト面の工夫もこらす。年2回は業務改善策を発表してもらい、お酒も交えた会食で交流。業務ごとに責任者を置き、昇給は健常者と同じ基準で評価する。マッサージを行うリラクゼーション室の実務責任者、視覚障害者の塩田大樹さん(29)は「チームの一体感を大切に技術力を高めている。それが評価してもらえてやる気が出る」と話す。
 
得意分野に配置 同じ賃金体系
 自社サイト制作のために雇った人の能力が高いと見るや外部サイト制作も受注したり、地道な作業が得意な人のために農業に参入したり、活躍の場を広げるため、「仕事を取りに行く」(庄司)。一方、知的・発達障害の社員には社長みずから家庭訪問に行くなど、丁寧なケアも重ねる。
 数字に強い人は経理伝票チェックに、データ分析の得意な人は市場分析に、など社員は得意分野で活躍する。
 「大切なのは障害で判断せず、健常者と同様、百者百様の個性や能力を見極めること」と庄司さんは話す。
 
 建機大手コマツは、特例子会社ではなく、本体人事部に約90人の知的・精神障害者が所属する。手紙の仕分けやコピーなどを手がけるが、他部署から依頼があれば出向いてパソコン入力などをこなし、社員と触れ合う。別会社でないので「頼んだり頼まれたりの垣根が低い」と綿引純子ビジネスクリエーションセンタ所長。
 最初は契約社員だが、働き次第で正社員になれば、賃金体系は健常者と同じ。08年センタ設立以来、8人が正社員になった。その一人の男性は「最初はプレッシャーもあったが、自信もついてきた。今まで以上に作業能力を高めたい」と話す。
 「どんな仕事をしてもらったらいいかも分からない中でのスタートだった」(綿引)というセンタ所属の障害者は、当初の6人から8年間で15倍になった。綿引さんは「社内の理解が深まると共に、仕事が増えています」と話す。