見えない障害や病気 どう配慮(下)

2016/04/03

朝日新聞 2016年3月31日

「ヘルプマーク」 統一? それとも…議論呼ぶ
 見た目ではつらさが分かりにくい障害者や病気の人が、配慮がほしいと周りに知らせるためのマーク。さまざまな種類がある中で、東京都作成のヘルプマークを中心に議論が白熱している。

京都府は「採用」 大阪府は検討続く
 自治体は揺れている。
 京都府は、4月からヘルプマークを府民らに配布する。山田啓二知事は2月の定例府議会一般質問で、「実効性や認知度を高めるには、より広域的取り組みが望ましい」と述べた。12府県市でつくる関西広域連合でも呼びかけた。
 それを受け、同連合を構成する府県市が協議したが、「統一は難しい」との話になり、ヘルプマークだけでなく、兵庫県や鳥取県などの障害者支援の取り組みやそれに伴うマークも合わせて普及に努める方針が決まった。事務局は「援助が必要と示すマークと、援助を実践する運動とを合わせてPRしていく」と説明する。
 内部障害者向けのハート・プラスマークなどの啓発をしてきた大阪府では、府議会健康福祉常任委員会で、西田薫府議(維新)が「統一的なマークに向けた取り組みが必要じゃないか」と指摘した。府は、関係課が集まって勉強会を立ち上げ、全国の動向を調べた。担当者は「関西広域連合全体の動きも見ながら検討を続ける」としている。

障害者団体にも支持の動き
 65団体でつくる「日本身体障害者団体連合会」は、ヘルプマークを推進することを決め、全国に周知されるよう取り組む。取材に対し、「援助を必要とする人が幅広く活用でき、誰もが使いやすいツールとして期待できる」とコメントした。知的障害者や家族らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」も、ヘルプマーク推進を後押しするよう内閣府に要望した。
 全国ろうあ連盟は、聴覚障害者に対しどんな配慮ができるかを伝えるため、「手話マーク」や「筆談マーク」を新たに作って普及啓発すべきだとしている。ヘルプマークについては「手話マークなどと併用すれば、どのような支援が必要かすぐ把握できて、より効果的」という。
 一方、NPO法人「ハート・プラスの会」代表理事の鈴木英司さん(56)は「統一的なマークもあっていい。だけど他にも様々なマークがあって、それぞれの困難があることも並行して知らせてほしい」と複雑な思いだ。鈴木さんは11年前に急性心筋梗塞になり、疲れやすく長時間立っていることがつらくなった。内部障害と言われた時、鈴木さん自身、それが心臓や腎臓など内部機能の障害を指す言葉だと知らなかった。一見健康そうに見える内部障害者が、優先座席などを気兼ねなく使えるよう、ハート・プラスマークを広めてきた。各自治体がヘルプマークのみを啓発したり、安易に統一すればよいと考えたりするのを心配する。ただ、課題も感じている。外見から気づかれにくい様々な困難を抱えた人から問い合わせが来るが、内部障害や内臓疾患以外の人を断るのがつらかった。使用できる対象者を広げようと会の中で何度も議論した。しかし、単に席を譲ってというマークではなく、内部障害者らの福祉の充実や就労支援を求める活動だ、との意見もあり、結論は出ない。鈴木さんは最近、問い合わせに対し「どうぞ使ってください。でも何のマークか尋ねられたら意味を伝えてくださいね」と答えている。
 東京都の担当者は「ヘルプマークは支援ニーズに着目したマークで、既存マークとは違う意味があり、併用できる」としている。