見えない障害や病気 どう配慮(上)

2016/04/03

朝日新聞 2016年3月30日
マーク乱立 知名度まだまだ
自治体 ばらばらにPR

 見た目は元気そうでも、体につらさを抱えている障害者や難病患者らが、電車内や街中で適切な配慮を受けられるよう、身につけて周囲に知らせるマークが各地で生まれている。ただ、自治体によって推すマークがまちまちで、広く知られていない。
 いま、最も動きが活発なのは東京都だ。援助や配慮が必要な人ならだれでも使える「ヘルプマーク」の普及にあたる。赤地に白く「+」と「ハート」があしらわれたデザインで、カバンにつり下げるなどして使う。片面にシールを張り、ほしい手助けを書き込んでおくこともできる。都は、2012年に作成して以来、約8万5千個を配布。14年には全国の道府県と政令指定都市に活用を依頼するメールを送った。東京五輪・パラリンピックを追い風に周知の広がりを目指す。
 朝日新聞が道府県・政令指定都市にヘルプマークを採用して配布に乗り出すか聞いたところ、京都府、青森、和歌山、徳島の3県が導入を予定、札幌市も検討するという。
 山口県は昨年、新たに援助を必要とする障害者のための「サポートマーク」を作った。障害への理解を深める運動で連携する中国地方などの6件に普及協力を働き掛けた。全国の都道府県や政令指定都市にも依頼する予定だという。
 心臓など体の内部機能に障害がある内部障害者らが作った「ハート・プラスマーク」は10年以上の歴史を持つ。埼玉県や大阪府はこれを啓発してきた。兵庫県は内部障害者や難病患者らが使える「譲り合い感謝マーク」を11年に制定、独自に普及させている。

「狭い範囲での取り組み 限界」
 公共空間で、人知れずつらい思いをしている人は少なくない。内部障害者、難病患者、妊婦など、外見からはわかりにくいつらさを持つ人は、少なくとも数百万人に上る。自治体が活発にマークの制作や普及に乗り出している背景には、この4月施行の障害者差別解消法がある。障害者への「合理的配慮」が官民双方に求められており、配慮をしやすくする環境整備が急務となっている。
 しかし、一般的な知名度はまだまだだ。
 東京都の女子大生(21)は、3年前にネフローゼ症候群を発症し、長時間立っているのがつらくなった。薬の副作用で免疫力も落ちている。しかし、マスクをつけている他は、どこにでもいる若者と同じに見える。1年前からヘルプマークをカバンにつけ、優先席にヘルプマークが貼られた都営地下鉄を利用するが、席を譲られたことはない。マークを知られていないと思うと、座ったときも周りの視線を冷たく感じる。「今はつらい側が一方的に発信しているだけ。配慮する側、される側双方が気持ちよく過ごすには認知度が必要。狭い範囲での取り組みでは限界がある」
 「各自治体がバラバラでは効果が薄い」と国にマークの統一を望む声も強いが、内閣府は「あくまで、それぞれの思いで作ったマークを一緒に普及する立場」としている。
  
 自民党は、マークに関するプロジェクトチームを立ち上げ、3月に9つの障害者団体から意見を聞いた。東京都のヘルプマークについて「普及に懸念を示す団体はなかった」として、近く何らかの提言を出すとみられる。